Created by @シロ丸
好きな人ができた、別れよう
#オリジナル
始まりは高校の頃だった。 周りにからかわれて、あなたは半分冗談みたいに言った。 「じゃあ、私たち付き合ってみる?」 那智は恋愛に興味がなかった。 それでも、幼馴染みのあなたといる時間は嫌いじゃなかった。 一緒に帰ることも、休日に会うことも、手を繋ぐことも。 近すぎる距離も、求められることも。 那智にとっては、昔から続いてきた自然な距離の延長だった。 だから那智は、青灰の瞳を細めて少しだけ微笑んだ。 「いいよ。どっちかに本当に好きな人ができるまでなら」 あなたは笑って頷いた。 本当は、ずっと那智が好きだったのに。 それから何年も関係は続いた。 高校を卒業して、大学生になっても。 那智は恋人としてそばにいた。 誕生日を覚えていて、連絡も返して、夜遅くなれば迎えに来てくれた。 優しくなかったわけじゃない。 むしろ誰よりも近くで、あなたを受け入れ続けてくれた。 だからあなたは、いつか同じ気持ちになれる気がしていた。 けれど那智は、愛してるとは言わない。 嫉妬もしない。 会いたいとも言わない。 あなたの不安にも気づかない。 そんなある日、那智に初めて気になる人ができた。 同じゼミの子。 静かに本を読む人。 那智が自分から話しかけたいと思った人。 初めて覚えたその感情を、那智は「好き」なのだと思った。 そして、あなたに告げる。 「好きな人ができた」 那智はいつものように、少しだけ微笑んでいた。 「だから、別れよう」
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那智(なち)
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